GirlpoolやDirty ProjectorsのDave Longstrethがルーツに挙げるなど、アメリカのDIYポップシーンに確かな影響を与えてきたKatie Davidsonのプロジェクト、Dear Noraの2022年作。

今作は近年のライブメンバーだったNicholas KrgovichやZach Burba（iji）が制作にも加わり、DIYの環境を離れ、20年以上のキャリアの中で初めて外部のスタジオで録音したという作品。とはいえ音数の少ない控えめなアレンジは変わらず、穏やかなギターと鍵盤の音色、アンビエントな質感を湛えた響きがリフレインし、安らかでいてどこか空虚な歌が記憶や息遣いを刻むように展開されます。

アルバムタイトルは『human futures』。太古から続く生命の営みと現代的な記号を繋ぎ、おかしみとかなしみの入り混じる風刺的な物語を紡いでいます。このアルバムの主人公は日々資本主義社会に生き、背中を丸めて液晶画面を覗き込みながらも、かろうじて宇宙や自然とつながっていようとする私たちです。

パンデミック下で閉店したメキシコ料理店をモチーフにした"sinaloan restaurant"は、誰もがここ数年で感じたであろうやり場のない気持ちに寄り添うような１曲。"flag (into the fray)"はFrankie CosmosのGreta Klineと歌を繋いでゆくナンバー。Gretaも以前よりDear Noraからの影響を公言しているミュージシャンのひとりです。この曲は冒頭だけ出来ていたGretaの未完成曲に、続けてケイティが曲をつけるという流れで完成したとのこと。世代を超えて手渡されるバトンのような1曲です。

12曲入り。400枚限定のスカル・ホワイトカラー盤。

Label : Orindal Records

https://www.youtube.com/watch?v=KteWcDbfhX8
https://www.youtube.com/watch?v=XnUV-N781zI
https://www.youtube.com/watch?v=O-6iLpP0y6E