Emily Spragueを中心としたインディ・フォーク・カルテット、Floristの4thアルバム『Florist』。活動開始から10年、満を持してのセルフタイトル作。Emilyがメンバーと物理的な距離を置きひとりで作り上げた前作『Emily Alone』（2019）、ソロ名義でリリースしたアンビエント作品『Hill, Flower, Fog』（2020）からの深い連なりを感じるアルバムです。

再びバンド編成となった今作は、ハドソン・バレーにある家を借りて、メンバー４人で生活をともにしながら制作。夏の夜、玄関のポーチに機材を置いて、風にそよぐ木々の音やコオロギの鳴く声、鳥のさえずりといった自然のささやきと、４人の魂の親密さを溶け合わせたアンビエント・フォークを奏でました。飾り気のない歌、瞑想的なドローン・シンセ、おぼろげなギター、木管楽器…それらのサウンドが滲み、ゆっくりと枯れて芽吹くように、生命が循環するように進んでいきます。アルバムの半数近くを占めるインストゥルメンタル曲は、料理の合間など日常のなんでもない瞬間に楽器を手にとり、息をするようにセッションを重ねた美しいドキュメント。アルバムを通して、まるで彼らと時間の流れを共有している感覚をおぼえます。

この作品にあるのは、足元で息吹く野草や小さな虫と交信し、宇宙や霊性を見つめる ささやかだけれど深遠な世界。そして、その感性を共有することができる仲間の存在。体の力がふっと抜ける安らかさがあり、心を清流で洗われるようなレコードです。

Label : Double Double Whammy

https://www.youtube.com/watch?v=Q4Gaa70pmtk
https://www.youtube.com/watch?v=zQ_MxJapZtI
https://www.youtube.com/watch?v=EWbYu_qqSf4